実践事例

アジャイルマーケティング事例 – HubSpot

マーケティングチームを「機能」ではなく「営業ファネル」に合わせてアジャイルマーケティングを実践しているHubSpotの事例をご紹介します(この事例は一般公開されているものです)。

スクラムをベースにしたチーム

画像:Agile for Marketing

HubSpotのアジャイルマーケティングチームは利害関係者との調整を行いながらバックログを管理するプロダクトオーナーと、自己組織化された機能横断型のメンバーで構成されており、スクラムマスターは置かれていません。

アジャイルマーケティングのチームづくりで大切なことでもお伝えしていますが、スクラムマスターがいることで、プロダクトオーナーとチームメンバーの間のコミュニケーションがよりスムーズになることが期待されるので、実際にチーム編成を考える際には「プロダクトオーナーがどれだけスクラムマスターの役割を担うことができるか」を熟考されることをオススメします。

また、HubSpotでは「スプリントコミットメント」というイベントが規定されています。これは「チームが次回のスプリントで取り組むストーリーにコミットする公開のミーティング」とされていますが、このコミットという言葉の使い方にも注意が必要です。

なぜなら、コミットという言葉が「なんとしてもスプリント内で完了しなければならない作業」と定義されてしまうと、チームメンバーは作業見積もりにバッファを取ってしまうからです。そうなると、チームメンバーが最大のパフォーマンスを発揮することも、チームの本当のパフォーマンスをもとにした見積もりの作成も出来なくなります。

さらに、「作業を完了させる」とコミットすることで「決められたタイムボックスを超えて作業をしなければならないプレッシャー」がチーム内に発生してしまいます。

アジャイルマーケティングの実践にあたっては、コミットしてもタイムボックス内で作業が終わらない場合に「見積もりの精度に改善の余地があった」や「予期せぬ割り込みなどで作業が遅れた」など、チームでその原因をふりかえることができ、さらにその原因に対する改善策を利害関係者たちが理解し納得しているという「お互いの信頼がベースにある文化の醸成」が必要です。

時には緊急対応がどうしても必要なこともありますが、「緊急事態による残業」が常態化しないように注意しましょう。

営業ファネルに対応したチーム構成

画像:Agile for Marketing

HubSpotの事例では、マーケティングチームがブランド&バズ、TOFU、MOFU、エバンジェリズム、マーケティアリングの5つに分けられています。各チームの担当範囲や利用している指標などは以下の通りです。

ブランド&バズ

ブランドのアウェアネス(知ってもらうこと)を高めることを目標に、PRや会社ブログ、イベントなどを担当しています。

直接検索やブランド検索、PRのカバレッジ、リーチ数がチーム内の指標となっています。

TOFU(トップ・オブ・ザ・ファネル)

リードの創出を目標に、コンテンツ制作、他社との共同マーケティング、アフィリエイトマーケティング、ディスプレイおよびPPC広告を担当しています。

サイト訪問者数、購読者数、資料ダウンロード数、リード数を指標として利用しています。

MOFU(ミドル・オブ・ザ・ファネル)

リードの育成を目標に、Eメール、ランディングページ、ウェビナーを担当しています。

リード数、コンバージョン率、リードの質が指標となっています。

エバンジェリズム

製品のアウェアネスを深めることを目標に、製品に関するコンテンツ、営業向けトレーニング、顧客イベントなどを担当しています。

製品の想起率やリードの案件化率、製品に関するPRを指標として利用しています。

マーケティアリング(マーケティング+エンジニアリング)

ツールやアプリの構築といったマーケティング施策のサポートを目標に、ツールやアプリへのトラフィック数、ダウンロード数、ユーザー数およびマーケティングチームの生産性が指標となっています。

利用されている主なプラクティス

スクラムガイドおよびスクラムの実践事例でよく見られるデイリースタンドアップ(15分/日)、スプリント(30日)、スプリントレビュー、バックログ、バーンダウンチャート、プランニングポーカーなどが利用されている一方で、レトロスペクティブ(ふりかえり)は明示的には紹介されていません。

画像:Agile for Marketing

また、ユーザーストーリーの例として、フィボナッチ数を利用したポイントシステムを含む優先順位の付けられたカードが紹介されています。

ユーザーストーリー(カスタマーストーリー)の作成に関してはアジャイルマーケティングにおけるバックログの作り方をご覧ください。

まずは小さなプロジェクトで実験を

マーケティングチームの中で優先順位付けを行い、重要なタスクに集中し、透明性と見積もり精度を高めたいのであれば、スクラムをベースにしたアジャイルマーケティングを導入することをHubSpotは推奨しています。

現在のHubSpotのマーケティングチームは、変化に適応しながら全く違った形に進化しているはずです。アジャイルマーケティングを行う上で大切なのは、絶対の正解を求めることではなく、小さな実験を繰り返し、それらの経験をもとにチーム全体で改善を続けていくことです。